研究概要 |
平成22年度は、書面で同意が得られた医学科4年次の全国共通進級試験(CBT試験)受験者を対象に、exon arrayを用いて、急性心理的ストレスに特異的な選択的スプライシング反応を網羅的に解析した。その結果、27遺伝子のストレス特異的選択的スプライシング反応を検出した。スプライシングの多くはinclusionではなくskippingであり(27遺伝子中21)、3'UTRのskippingが特徴的であった(8遺伝子)。Open reading flame (ORF)に認められる選択的スプライシング反応の中で、p53を介するストレス反応に重要なSMG-1遺伝子のエクソン63のskippingをリアルタイムPCRで確認した。SMG-1遺伝子は、ストレス応答に重要な役割を果たすPI3-kinase-related kinaseをコードしており、エクソン63はキナーゼ調節領域を含むことから、SMG-1遺伝子のエクソン63の選択的スプライシング反応は、急性心理的ストレス応答に重要な役割を果たす可能性が示唆された(Neurosci Letter, 2010)。 さらに、医師国家試験受験者の慢性心理的ストレスモデルを用いて、グルココルチコイド受容体の選択的スプライシング反応の解析を行い、受容体機能のないGR-betaの発現が特異的に低下する事を誌上発表した(Stress,2011)。 in vitroの研究も平行して進めた。スプライシング調節因子の中でストレス応答性のTra2-betaとSRSF3について研究を進め、Tra2-betaの発現調節とSRSF3の細胞周期とアポトーシスの調節機構については平成23年度に誌上発表予定である。
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