研究概要 |
「研究の目的」先進国においては神経性食欲不振症(anorexia nervosa : AN)患者が増加しており、社会的にも大きな関心を集めているが、その病態に関与している腸内因子については未解明である。近年、腸内フローラの新しい生理作用が続々と解明されているが、なかでも肥満症の発症や維持・増悪に関与していることを解明したGordonらの報告(Nature 2006;444:1027-1031)は世界中の研究者に衝撃をあたえた。この報告以降、世界中で肥満症の腸内フローラ解析が進行中であるが、ANにおける腸内フローラ解析は極めて限られている。最近、フランスのグループよりAN患者群においてMethanobrevibacter Smithiiが増加していることが報告されたが(PLo SOne. 2009, 23;4(9):e7125)、解析したサンプル数は少なく、AN患者における腸内フローラめ詳細を明らかにするには至っていない。本研究では、腸内因子として腸内フローラに焦点を当て、AN患者にみられる極度のるいそう状態における腸内フローラの詳細を解明する。 「研究実施計画」対象は、15歳以上から40歳までの構造化面接においてアメリカ精神医学会精神疾患診断統計マニュアル第IV版のANの診断基準を満たし、文書によって同意の得られた30名の外来および入院患者と、年齢を一致させた健常女性30名。研究1では、患者群とコントロール群の腸内細菌を横断的に比較する。研究2では、入院治療の適応となったAN患者群において体重増加による腸内細菌の変化を前向きに検討する。ベースラインは脱水や電解質異常が改善された入院後2~3週間後と定義する。糞便サンプルはベースライン、1, 2, 3ヶ月後の4回採取し、腸内フローラを解析する。合わせて、通常診療で検査を行っている心理・生理・生化学的データ(呼気ガス分析による基礎代謝測定を含む)および消化器症状の主観的尺度を経時的に評価する。また糞便からのRNA/DNA抽出と解析は、腸内フローラ解析システム"YIF-SCAN"(Yakult Intestinal FIora Scan)を用いて行う。 以上の研究は九州大学病院倫理委員会にて承認されており、平成23年度より患者の登録を開始している。
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