研究課題
Non-alcoholic steatohepatitis(NASH)はアルコール非依存性に発症する脂肪蓄積性の肝炎であり、単純性脂肪肝であるNAFLD(Non alcoholic steatohepatitis)からNASHとなりその後肝硬変肝臓がんに至る。近年、患者数が増加しているが、その発症には不明な点も多い。一方、歯周病菌は歯周病を引き起こすだけでなく、糖尿病、心血管系疾患、切迫性流産、など様々な全身性疾患と関わりがあることが指摘されているが、NASHとの関連性についての報告はこれまでに全く無い。本研究は、NASH患者唾液から歯周病菌を高感度に検出することにより、NASH発症における歯周病菌の関与を明らかにし、歯周病菌感染がNASH発症のリスクファクターとなりうるかどうかを検討した。健常対照60人、NAFLD患者48人、NASH患者102人の唾液を解析したところ歯周病菌の一種Porphyromonas gingivalis(P.gingivalis)の有菌率が健常人に比べNAFLDで有意に高かった(46.7% vs 21.7% OR=3.16)、さらにNASHでは健常対照に比べさらに有意に多かった(52%, OR=3.91)。NASH患者では高病原性のP.gingivalisであるII型が有意に多かった。異常の結果はBMC Gastroenterologyにて報告した。本結果は近年先進国で虫歯は減少するものの固いものを食べなくなった結果増加してきている歯周病、特に高病原性の歯周病とNASHとの相関を示した初めての報告であり、我が国においても各全国版の新聞紙上に掲載され国民の関心が高いことがうかがえた。本結果はわが国増加の一途をたどる本疾患の治療予防に関して口腔内衛生が非常に重要であることを示唆し、今後の予防治療対策に重要な知見を提示するもとを考えられた。
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BMC Gastroenterology
巻: 12 ページ: 16
Digestion
巻: 85 ページ: 261-265
J Gastroenterol
巻: 46 ページ: 894-905