骨髄の中には、血球系細胞へ分化しうる造血幹細胞と、骨・軟骨・脂肪細胞などに分化する間葉系幹細胞が存在する。造血幹細胞については研究が進み、臨床的にも骨髄移植に用いられている一方、間葉系幹細胞が生体内で果たす役割は依然として不明の点が多い。その原因は、これまでの間葉系幹細胞は骨髄細胞を培養皿に撒いて接着した細胞として採取された不均一な細胞集団であること、また培養を経ているので生体内での本来のはたらきを反映してないという点にあった。本研究の連携研究者によって近年新たに分離・同定された間葉系幹細胞は、培養を経ないで直接骨髄から採取できるところに最大の特徴がある。 今回の実験では、骨髄中の造血幹細胞と問葉系幹細胞とを個別に標識することで、線維肝に多数の造血幹細胞由来の細胞が流れ着くこと、その一部が線維を分解するコラゲナーゼ酵素を産生することで肝線維化の改善に寄与することを明らかにした。その一方で、間葉系幹細胞の線維肝への生着は全く認められないことを証明した。これは、間葉系幹細胞によるコラーゲン産生が肝臓の線維化をむしろ悪化させるという危惧を払拭するものである。加えて、間葉系幹細胞がきわめて多量のコラゲナーゼ酵素を産生していることを見出し、これを外来的に注入することによる難治性肝硬変症例に対する細胞治療法への道を切り開いた。
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