研究課題/領域番号 |
22659154
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
矢野 雅文 山口大学, 医学部附属病院, 講師 (90294628)
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研究分担者 |
山本 健 山口大学, 大学院・医学系研究科, 助教 (50363122)
池田 安宏 山口大学, 大学院・医学系研究科, 助教 (00260349)
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キーワード | 肥大型心筋症 / リアノジン受容体 / カルシウム動態 |
研究概要 |
肥大型心筋症(HCM)において、現時点では心肥大を退縮させる有効な薬物療法は存在しない。本研究ではHCMで心肥大を生じる機序として、拡張期の心筋細胞内Ca2+濃度上昇に着目し、Ca2+漏出の抑制による心筋筋小胞体機能の改善により拡張期Ca2+濃度上昇を防ぐことで、異常な心肥大につながる細胞内シグナリングを抑制し心肥大を退縮させうるかについて検討した。まず、安静時には心臓に形態学的異常がないがカテコラミン刺激によりリアノジン受容体(RyR2)からのCa2+漏出による致死性不整脈を引き起こすCPVT型RyR2点変異マウス(KI)を用いて、慢性の低用量イソプロテレノール(ISO)負荷により心肥大を惹起するかを検討した。KIではwild typeマウスと比して著明な心肥大を生じ、心筋細胞内Ca2+spark頻度は著明に増加していた。この結果は拡張期の心筋細胞内Ca2+濃度上昇の上昇が心肥大を惹起することに深く関わっていることを示唆する。一方、家族性肥大型心筋症でみられる点変異を模したHCM型トロポニンTトランスジェニックマウスでは加齢に伴い軽度の心肥大と拡張機能障害を呈し、単離心筋細胞ではコントロール状態でCa2+transientの下行脚の延長を認め、Ca2+spark頻度は増加し、ISO負荷でその傾向はさらに顕在化した。この結果は、心肥大をきたしたHCMで拡張期Ca2+濃度が上昇していることを示唆している。また、RyR2安定化薬のダントロレンを投与したところ、Ca2+spark頻度、Ca2+transientはともに著明に改善傾向であった。以上のことは、HCMにおいてRyR2を介した拡張期Ca2+濃度上昇と心肥大とが相互に強い関連性を持っていること、拡張期Ca2+濃度上昇の是正が心肥大退縮を起こしうる可能性を示すものであり、今後の治療法の開発につながる重要な成果である。
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