ミトコンドリアに障害が存在していても、ミトコンドリア由来のアルデヒドがセコンドメッセンジャーとして働きelF2αリン酸化シグナル(integrated stress response)の活性化を介して代謝応答(還元物質グルタチオンの合成を促進)を刺激して、心機能を維持し、さらに虚血再灌流障害による強い酸化ストレスに対しては野生型の心臓よりもむしろ抵抗性を獲得する適応現象(ホルミシス)を報告した。本研究においてはelF2αリン酸化シグナルを活性化および抑制するトランスジェニックマウスを用いてelF2αリン酸化シグナルがミトコンドリア酸化ストレスだけでなく、すべての心ストレス源に対して普遍的に働く適応機構として心筋保護的に働いていることを明らかにする。また、elF2αリン酸化シグナルの活性化を引き起こす上流のシグナル伝達経路を解析して模倣的なホルミシスを樹立する創薬標的分子の同定を試みる。 (A)人工的dimerizer AP20187誘導性にFv2E-PERKキメラ蛋白を2量体してelF2αリン酸化シグナルを活性化させるトランスジェニック(Tg)マウス(αMHC-Fv2E-PERK)及びelF2α特異的脱リン酸化酵素Gadd34のC末端側のフラグメント(Gadd34C)を発現させelF2αリン酸化シグナルの活性化を抑制するTgマウス(αMHC-Gadd34C)を作製した。現在、交配により数を増やしている。また、培養心筋細胞を用いた実験系を構築するためにFv2E-PERKキメラ蛋白およびGadd34Cを発現させるアデノウイルスを作製した。
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