抗アポトーシス作用を持つ新規心筋転写因子として、Zac-1遺伝子を同定した。Zac-1をCOS細胞に遺伝子導入し、抗体で染色した結果、および核分画と細胞質分画を分離し、Western blotを行った結果、この遺伝子は主として核分画に存在することが明らかになった。胎生7.5日以後のマウス胎児をwhole mount in situ hybridizationを行い、心臓領域のZac-1遺伝子の発現を観察したところ、Zac-1は胎生7.75日より発現し、胎生8日より強く発現することが明らかとなった。Zac-1遺伝子はANPプロモーターに対する転写促進活性を有していた。この転写因子がANPプロモーターのいずれの部位に結合するかを明らかにするため、ANP-Lucプラスミドのdeletion mutantを作成し、Zac-1遺伝子の結合部位を同定したところ、Zac-1は2カ所あるNkx2.5遺伝子結合部位の2個目の直前に存在することが推測された。種々の長さのZac-1の変位位体を作成し、変位体プラスミドとANP-LucプラスミドをともにCOS細胞に共遺伝子導入し、ルシフェラーゼアッセイを行ったところ、Zac-1遺伝子のいずれの部分がANPプロモーターと結合することが明らかとなった。COS細胞のNkx2.5、GATA4、MEF2Cのいずれかの遺伝子とZac-1変位体を共発現させ、共免疫沈降により、会合を確認した。既知の心臓特異的転写因子とZac-1遺伝子のANPプロモーターに対する作用を観察し、Zac-1遺伝子の心臓における転写因子としての性質を解析したところ、Zac-1とNkx2.5遺伝子は共調的に働き、ANPの転写活性を増強させた。
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