山中らが樹立したマウスiPS細胞(iPS-MEF-Ng-492B-4)を理化学研究所より入手し、feeder細胞(SNL76/7)を用いて継代培養を行い、培養手技の習熟を図った。未分化マーカー(SSEA-1、OCT3/4、Nanog)の発現を免疫染色とフローサイトメーターで確認したところ、30代継代してもiPS細胞の未分化状態を維持できることを確認した。そこで、既報のES細胞から肺上皮細胞へ分化するプロトコールを改良して、invitroでiPS細胞から肺上皮細胞への分化誘導を試みた。まず、iPS細胞の培地にactivinA(20ng/ml)、Wnt3a(10ng/ml)を加えて、6日間の培養を行い、iPS細胞をまず内胚葉細胞へ分化させた。内胚葉分化マーカーとして、SOX17とFoxa2の発現を確認したところ、分化誘導の結果、著しく発現上昇していることを、リアルタイムPCRおよびFCMで確認した。内胚葉に分化したiPS細胞をさらにSABM(smallairwaybasalmedium)にFGF2(50ng/ml)を加えて5日間培養を行い、肺上皮細胞への分化を試みた。その結果、分化開始11日目8%前後の細胞にSP-C蛋白の発現が免疫蛍光染色およびFCMで確認された。また、リアルタイムPCRにおいても、SP-CmRNAの発現上昇が確認された。また、電子顕微鏡検査より、肺胞II型細胞に特徴的なlamellabodyと微絨毛が確認された。以上より、ES細胞と同様、iPS細胞からもinvitroにおいて、肺上皮細胞への誘導が可能であることが確認された。
|