カルボニル物質の慢性腎臓病の病態に対する関与を検証した。カルボニル物質の前駆物質であるフルクトースをラットに経口投与し、インスリン抵抗性をグルコースクランプ法を用いて検討した。その結果、高フルクトース食により、グルコースクランプ法によるM値は低下し、インスリン抵抗性の増大が示唆された。フルクトース投与によるインスリン抵抗性の増大にレニン・アンジオテンシン系の関与を検討するために、一群のラットにアンジオテンシンII受容体拮抗薬であるロサルタンを投与した所、インスリン抵抗性が改善した。このインスリン抵抗性のメカニズムを検討するために、長趾伸筋の血管密度を検証した。その結果、長趾伸筋の血管密度とインスリン抵抗性に有意な相関がみられ、フルクトースによるインスリン抵抗性の機序になると考えられた。また、この時の腎障害の程度を尿中アルブミン排泄量で評価した所、有意な減少を認めた。 次にメチルグリオキサールの腎障害への関与を検討するために、ラットの腹腔内にメチルグリオキサールを投与し、腎障害に対する影響を検討した。メチルグリオキサールの腹腔内投与により腎尿細管を中心とした障害が観察された。メチルグリオキサール代謝酵素のglyoxalasel(GLOl)を過剰発現するラットに対してメチルグリオキサールを腹腔内投与すると、カルボニル物質とともに尿細管障害の程度が減少していた。これらの結果からカルボニル物質は慢性腎臓病の病態に関与していることが示唆された。
|