研究課題/領域番号 |
22659170
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
山田 正仁 金沢大学, 医学系, 教授 (80191336)
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研究分担者 |
小野 賢二郎 金沢大学, 附属病院, 講師 (70377381)
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キーワード | アルツハイマー病 / 医療行為 / 食品 / アミロイド / 伝播 |
研究概要 |
本年度は、アミロイドβ蛋白(Aβ)蓄積を特徴とするAlzheimer病(AD)において、プリオン病と同様に、微量のAβあるいはAβ以外のアミロイド蛋白凝集体が外来性に投与されることによってAβ凝集が促進されるか否かを検証することを目的に以下の研究に取り組んだ。成果は以下の通りである: (1)試験管内Aβ凝集系を用いた研究:Aβ(Aβ40、Aβ42)、Aβ以外の蛋白(α-シヌクレイン蛋白(αS)、シルク)の凝集体のseeding効果を検討した。本年度は、シーズとしてAβ及びαSオリゴマーと超音波破砕されたシルク(フィブロイン)線維を用いた。Aβ40、Aβ42のみをpH7.5、37℃でインキュベートしたところ、チオフラビンT(ThT)の蛍光値はラグタイムを伴うシグモイドカーブを描いて増加した(重合核依存性重合反応)。一方、超音波破砕されたAβ40、Aβ42およびαSのオリゴマーを加えた所、ThTの蛍光値はラグタイムなく速やかに増加した。オリゴマーのseeding効果は、AβおよびαS線維に比べると弱かった。また、超音波破砕されたシルク線維もcross-seeding効果を示した。昨年度及び本年度の研究によって、Aβ線維形成において、Aβ線維・オリゴマーばかりでなく、Aβ以外の蛋白凝集体(αSの線維・オリゴマー、シルク線維)もシーズとして作用することが明らかになった。 (2)ADモデルマウスを用いた研究:ADモデルマウスにシルク線維を中枢神経系及び末梢より投与し、Aβ蓄積促進効果を検討する研究プロトコールを作成し、マウスの定位脳手術の実験装置を設置するなどの準備を進めた。 In vitro実験のデータは、AD以外の蛋白凝集性疾患、あるいは食品、化粧品などに含まれる凝集性蛋白によってAD発症過程が促進される可能性を示唆する重要な成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
試験管内Aβ凝集系を用いた研究は順調に進展し、論文投稿段階に至った。ADモデルマウスを用いた研究は、試験管内Aβ凝集系の研究結果に基づき実験計画を立てるため開始までに時間を要しているが、試験管内でcross-seeding効果を確認できた外来性の蛋白凝集体を用いるインパクトのあるプロトコールを作成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、試験管内Aβ凝集系では、他の外来性の蛋白として、セリン、アクチン、カゼイン等の凝集体のcross-seeding効果を検討する。また、遺伝子改変AD動物においてcross-seeding効果を調べる研究を推進する。
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