脳のアミロイトβ蛋白(Aβ)蓄積を特徴とするAlzheimer病(AD)はプリオン病と同様のメカニズムによって伝播する可能性がある。微量のAβあるいはAβ以外のアミロイト蛋白凝集体を外来性に投与することによってAβ凝集が促進されるか否かを、ADモデルを用いて検討した。 (1) 試験管内Aβ凝集系モデルを用いた研究(山田/小野): 平成24年度はセリシン、アクチン、カゼイン、膵ラ島アミロイド蛋白(IAPP)の凝集体のAβ凝集に対するseedingあるいはcross-seeding効果をチオフラビンT蛍光法(ThT)および電子顕微鏡等を用いて試験管内Aβ凝集系で検討した。シーズとして、試験管内で形成させた各蛋白線維を超音波破砕したものを用いて、それらのAβ40およびAβ42線維形成促進効果(seeding効果)を評価した。超音波破砕されたセリシン、アクチン、カゼイン、IAPPの線維を加えた所、ThTの蛍光値は、ラグタイムなく、速やかに増加した。Seeding効果の強さは、Aβ40、Aβ42ともにアクチン>セリシン≒カゼイン≒IAPPであった。以上の結果から、セリシン、アクチン、カゼイン、IAPPといった蛋白由来のアミロイド線維がAβ40およびAβ42凝集系においてシーズとして作用することが明らかになった。 (2) ADモテルマウスを用いた研究(山田)
:外来性に投与されるシルク蛋白などがAD発症を促進するか否かを明らかにするために、Aβ、フィブロイン、カゼイン等の蛋白凝集体を複数のルートからADモデルマウスへ投与する実験を開始した。海外共同研究者のチュービンゲン大学のJucker教授と共同で、R1.40マウスをブリードしホモ接合体マウスを準備した。2013年3月、金沢大学動物実験委員会及び遺伝子組換え実験安全委員会から本実験に関する承認を得て実験を開始した。
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