研究概要 |
本研究では、幅広い圧力と温度環境における核磁気共鳴(NMR)測定に基づき、孤発性ALSの原因タンパク質であるTDP-43のコンフォメーション平衡の全容解明を行う。さらに、コンフォメーション平衡内で存在が想定される変性中間体(ゆらぎ構造)からミスフォールドTDP-43分子モデルを構築し、in vitroのALSモデル開発や特異抗体作出によるALSの分子病理の解明と共に、抗体の特性を活用した、分子標的に対する新たな治療薬の開発を目指すものである。本年度の申請計画内容と進捗は以下のとおりである。 TDP-43のRRM1ドメインに圧力下に不可逆的なケミカルシフトを起こすアミノ酸配列に対する、ウサギポリクローナル抗体作製と、変性中間体モデルのデザイン決定、コンストラクションの作成。 >我々はRRM1に対する圧力負荷によって、分子間のジスルフィド結合を介した二量体をコアとした経時的な凝集体形成が促進されることを発見した。RRM1ドメインには2ヶ所のシステイン(Cys173/Cys175)が存在するが、これらの単変異体(C173S,C175S)ではジスルフィド結合を介した二量体形成が促進され、さらに二重変異体ではジスルフィド結合とは無関係のオリゴマー形成が促進されることから、2つのフリーシステインRRM1ドメインの構造維持に重要であることが判明した。そしてCys173,Cys175に変異を有する全長TDP-43は各内で著明な封入体を形成し、TDP-43のミスフォールディングを反映した凝集体モデルの構築に成功した。さらにRRM1の凝集体をプロテアーゼ処理後の非切断断片を質量解析した結果、NMR解析で同定されたドメインと3箇所のアミノ酸群でオーバーラップしていることが判明し、凝集関連配列と命名した。2ヶ所の凝集関連配列に対するポリクローナル抗体を作製し、免疫細胞・組織化学的検島ソしたところ、培養細胞におけるCys175/Cys175の置換変異体と細胞質型TDP-43、ALS患者における細胞質封入体を認識したことから、本配列がRRM1のジスルフィド結合を介したTDP-43のミスフォールディングにおいて重要な役割を果たしていることが判明した。この成果を論文投稿した(Shodai et al,Disulfide-mediated aggregate propensity of RNA-recognition motif 1 links to TDP-43 misfolding in ALS).
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