1)乳癌MCF7細胞ではVDR、ERα、AR、GR、PRの核内受容体(NR)が有意に発現され、各リガンドに対応するNRを介するPTHrP遺伝子の50%以上の発現低下が認められた。各NRに対するsiRNA導入でこの対応は確認されたが、DHTによるPTHrPの抑制だけは当該のARではなくERαが直接関与した。さらにE2とDHTはこの細胞でERBB2、IGFBP5、サイクリンG3遺伝子発現をも抑制するが、このDHTによる転写抑制もまたARでなくERαを介していた。この細胞でARが機能していることは、FKBP51遺伝子においてE2ではなくDHTが明らかにARを介しての発現促進を行っていたことから明らかであり、E2とDHTの核内情報系の一部互換性が示された。 2)前立腺癌LNCaP細胞では変異ARが発現し、ERα、PRの発現は極めて少ないが、これらのNRに対応するホルモンによるPTHrP遺伝子の転写抑制が共通に認められた。アンタゴニストとsiAR導入によってこれらのホルモンは変異ARを介してこの抑制を惹起していることが判った。さらにMCF細胞に匹敵する量のVDRとGRがLNCaP細胞では発現されているにも関わらず、非導入LNCaP細胞においてビタミンDおよびデキサメサゾンによって認められていたPTHrP発現抑制が、siAR導入によって解除された。 3)ERα、GRおよびPR発現が稀少なMDAMB453乳癌細胞ではPTHrP遺伝子の発現はDHTとビタミンD3によってのみ抑制された。 この3種の細胞ではERa、ARによって制御される遺伝子のNR結合にパイオニア因子としてFoxA1が重要な役割を担っていることが続々と報告され、このFoxA1はGRやPRの結合にも影響を与えることが知られるようになったことからChlP法を用いたFoxA1とこれらのNR全てとの間の相互関係を検討中である。
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