研究概要 |
RAEBなど病期の進行したMDSでは分裂像や核形態の異常がほぼ全例に認められ、疾患の進行に深く関与するものと考えられている。われわれはMDSで高頻度に欠失する7番染色体長腕(7q)より、MDSを抑制する四候補遺伝子(Samd9,Samd9L,LOC253012=Miki,CG-NAP)を単離し、その遺伝子産物の機能を検討してきた。Samd9やSamd9Lが初期エンドソームの形成に局在し、リガンドと結合したサイトカイン受容体の代謝に関与するのに対して、Miki,CG-NAPは分裂期中心体に局在し、間期にはゴルジ体に、分裂期には中心体や紡錘糸に局在し、分裂期に必要な傍中心体物質(PCM)を中心体に輸送するシステムのメンバーであることが明らかとなった。MikiやCG-NAPの発現抑制は、前中期中心体の不明瞭化と紡錘糸張力低下の結果、染色体が赤道面に整列せず、染色体散乱(コルヒチンミトーゼ)などの顕著な染色体整列異常が生じた。このため、分裂細胞は中期に入れずに遅滞し、染色体早期脱凝集現象を生じて、二核・多核・小核細胞などMDSに特徴的な形態異常を生じた。一方、われわれは分裂中期の中心体機能を維持する蛋白質としてdynactin-3を同定した。本蛋白質はp150^<Glued>やdynamitinと複合体を形成し、分子モーターとして機能することが知られていたが、われわれの研究結果はdynactin-3が中期中心体に単独で存在し、その機能維持を司ることを示唆するものであり、その発現低下によってMiki/CG-NAPとは異なる機序による分裂異常をもたらすものとして注目している。
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