研究課題
「筋症状のない」皮膚筋炎(ADM)は、特徴的な皮疹を認めるにもかかわらず筋症状を認めない皮膚筋炎(DM)の亜型であるが、我国では致死的な急速進行性の間質性肺炎(IP)を合併し生命予後が悪いことが報告されてきた。近年ADM患者血清に新たな特異的自己抗体(抗CADM-140抗体)が発見され、生命予後の悪いADM-IPの早期診断、病因・病態解明と新たな治療戦略への可能性を秘めている。申請者らは同抗体の対応抗原がウイルスRNAを感知しインターフェロン産生を誘導するIFIH1またはMDA5として知られる細胞内分子であることをつきとめた。本年度は同抗体陽性患者の血清サイトカインプロフィール、詳細な臨床的意義の解析と治療法の検討、HLA解析を行った。1.抗CADM-140抗体陽性患者の血清中サイトカインプロフィールの検討抗CADM-140抗体陽性血清中の種々のサイトカインを測定したところ、抗体陰性DM血清に比してIL-6、IL-8、IL-10が有意に高く、IL-12p70とIL-22が有意に低いことが示された。TNF-α、IFN-β、IL-1β、IFN-γには有意差が見られなかった。同抗体陽性患者では病初期から血清フェリチンが高いことを見出しており、サイトカイン異常によるマクロファージ活性化が示唆された。2.抗CADM-140抗体陽性患者の臨床像の解析抗CADM-140抗体陽性IPのHRCTを検討し、治療開始前のHRCTでは抗体陽性IPでは下肺野の浸潤陰影またはスリガラス陰影、およびランダムなスリガラス陰影が多く認められ、陰性IPに多く見られる下肺野の網状陰影はほとんど認められなかった。同抗体陽性例は陰性DMに比較して生命予後は極めて不良(6ヵ月生存率50%)であり、年齢、治療介入時の低酸素血症、高フェリチン血症は予後不良因子として抽出された。しかし、早期からの強力な免疫抑制療法(ステロイド大量、シクロスポリン、シクロホスファミドパルス療法の併用)により生命予後改善の傾向が認められた。3.抗CADM-140抗体陽性患者の免疫遺伝学的特徴抗CADM-140抗体陽性のDMおよびADM患者20例についてHLAクラスII抗原遺伝子型を検討したところ、DRB1*1302が抗体陽性例で健常人に比して有意に高頻度であった(p=O.003044、OR 3.78;95%信頼区間1.469-9.764)。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (1件)
Curr Rheumatol Rep
巻: (Epub ahead of print)(in press)
10.1007/s11926-012-0246-6
Respir Med
巻: 105(8) ページ: 1238-47
DOI:10.1016/j.rmed.2011.03.022
Respiratory Medicine
巻: 105(9) ページ: 1380-1387
10.1016/j.rmed.2011.05.006