タンパク質に翻訳されないノンコーディングRNA (ncRNA)が生体内で多数存在することが明らかとなり、その生理作用に大きな関心が寄せられている。これらのRNAは通常メチル化など種々の修飾を受けているが、その意義は不明である。本研究はRNA修飾と自己免疫疾患との関連を明らかにすることを目的とする。本年度は、自己抗体のエピトープに結合する人工抗体の作製、RNA修飾を識別する人工抗体の単離、RNA修飾欠損モデル動物の解析を行い、以下の成果を得た。 1.自己抗体のエピトープに結合する人工抗体の作製:前年度に単離した自己抗体のエピトープ(U1snRNA)を認識する抗体クローンからヒト型のIgGを作製した。IgG産生能力を上げるために、ベクターの改良、培養条件の検討を行った。得られたIgGは、改良の余地が残されているものの、ncRNAと自己免疫疾患の関連を解析するための有効なツールになると期待される。 2.RNA修飾を識別する人工抗体の単離:非修飾および修飾を施されたU1RNAを抗原として、これに結合する抗体クローンをファージ提示型人工ライブラリーから単離した。今後これらクローンの抗原特異性を検定するとともにRNA修飾の識別能力を解析する予定である。 3.RNA修飾欠損モデル動物の解析:前年度に作製した修飾欠損のゼブラフィッシュモデルを用いて、修飾の欠損と翻訳活性との関係を調べた。ポリソームパターンの解析(mRNAに結合しているリボソームの解析)を行った結果、全体の翻訳レベルに大きな変化はないことが明らかになった。今後、次世代シーケンサーを用いてポリソーム画分より抽出したmRNA(翻訳中のmRNA)のプロファイルを決定する。
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