研究概要 |
MLL遺伝子の再構成を有する乳児白血病は、胎生期にその起源を有することが知られている。また、MLL融合遺伝子のタイプによって、乳児白血病細胞の生物学的性状も異なっており,そのことが乳児白血病の予後にも大きな影響を与えているが、MLL遺伝子が胎生期白血病を発症するメカニズムや、MLL融合遺伝子が乳児白血病細胞の生物学的性状に与える意義については、ほとんど解っていない。本研究では,種々のMLL融合遺伝子を有する乳児白血病細胞からiPS細胞を作製し,一旦胎生期の多能性幹細胞の状態にリプログラミングした後、その状態からあらためて造血/血液細胞に分化誘導し,その分化過程の共通点と相違点を明らかにすることによって、MLL遺伝子による胎生期白血病の発症機序や、MLL融合遺伝子の乳児白血病細胞の生物学的性状に与える意義を解明することを目的として開始された。 そこで、まず、MLL融合遺伝子を有する乳児白血病細胞に、OCT3/4、SOX2、KLE4の3遺伝子、あるいはこれにc-MYCを加えた4遺伝子を導入することにより、乳児白血病細胞由来iPS細胞の樹立を試みた。しかし、頻回にわたり樹立を試みたが、乳児白血病細胞からのiPS細胞を樹立することは困難であった。こうしたiPS細胞樹立の困難さは、乳児白血病細胞のみではなく、多くの白血病細胞で報告されており、白血病細胞からiPS細胞が樹立が困難なメカニズムを明らかにすることが、白血病細胞の生物学的特性を明らかにし、さらには新たな治療法の開発に繋がるものと考えられる。
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