研究課題
小児の急性脳症を起こす可能性のある薬物のβ酸化への影響を、in vitro probe assay (IVP assay)を用いて検討し、以下の結果を得た。1)アスピリンの影響:ライ症候群の原因となりうる代表的な薬剤である。IVP assayによると、正常細胞ではβ酸化へQ影響はみられなかった。アスピリンは、脂肪酸代謝異常患者の細胞で(VLCAD欠損症とMCAD欠損症)検討した。VLCAD欠損症においてアスピリン存在下では長鎖脂肪酸の抑制される所見が観察された。2)バルプロ酸の影響:37℃では明らかなβ酸化系への影響はみられなかったが、41℃の高温化において、MCAD欠損症でもVLCAD欠損症でもそれぞれの代謝障害が増強されることが観察された。3)ベザフィブレートのβ酸化への影響:β酸化異常症の細胞をもちいて(MCAD欠損症、VLCAD欠損症、TFP欠損症、グルタル酸血症2型GA2)IVP assayによって薬理効果を調べた。検査した全例で、ベザフィブレートがβ酸化障害を改善することがわかった。4)ベザフィブレートの濃度依存性:β酸化全体が障害されるGA2に対する効果を調べた。GA2は新生児期発症型(重症型)と遅発型がある。遅発型では低濃度のベザフィブレートで代謝改善効果がみられた。重症型ではその濃度を4~6倍にあげたところ効果がみられるようになった。臨床的重症型ではより大量のベザフィブレートの投与によって改善することがわかった。本症の重症型は乳児期早期に死亡することが多いが、治療の道が開けた。また遅発型でもQOLのよい治療法が開発される可能性が高い。
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