研究概要 |
従来皮膚には、表皮に存在うるランゲルハンス細胞(LC)と、真皮に存在する真皮樹状細胞(dDC)の存在が知られていた。そのうち、特にLCが、皮膚への外来抗原曝露に対するT細胞分化に関与していると考えられてきた。しかし近年、皮膚にはランゲリン陽性真皮樹状細胞(ランゲリン陽性dDC)と呼ばれる新たなDCサブセットが明らかとなり、少なくともマウスにおいて皮膚には3種類のDCが存在することになる。そして、LCが存在しない状態でも接触アレルギー性皮膚炎症における皮膚DCの役割についての従来の概念に疑問が投げかけられている。よって本研究では、アトピー性皮膚炎(Th2反応)および接触アレルギー(Th1反応)における皮膚DCの役割を、3つのDCサブセットにおいて包括的に解析することを目的とする。 各DCサブセット特異的欠損マウスは、langerin-GFP-DTRマウスを用いた。同マウスは、ランゲリンプロモーター下にて蛍光タンパクであるeGFPとヒトのジフテリアトキシン(DT)受容体を発現する。よって、このウスにDTを投与すると、一過性にランゲリン陽性細胞(LCおよびランゲリン陽性dDC)が除去される。一度除去されると、LCは数週間回復してこないが、ランゲリン陽性dDCは数日で回復することが分かっている。この差を利用すると、(1)LCのみが欠損した状態(2)LC及びランゲリン陽性dDC両方が欠損した状態が形成される。更に、LCは放射線照射に抵抗性であるがdDCは放射線に感受性が強く、骨髄移植を行うとLCはドナー由来のものが存続する。この性質を利用し、野生型マウスにLangerin-eGFP-DTRマウス骨髄を移植すると,ランゲリン陽性dDCのみがDTを発見した状態になり、DT処理にて(3)ランゲリン陽性dDCのみが欠損する状態が作成される。更に申請者は、CD11c-DTRマウスを保有しているが、このマウスにDTを投与するとCD11c陽性細胞(=DC)がすべて欠損する状態が作成される((4))。 このマウスを用いて接触皮膚炎の定量と通常量のハプテン塗布による感作を実施したところ、低容量の時に限り、LCとlangerin陽性dDCを共に除くことにより接触皮膚炎が低下した。以上より、通常量のハプテン感作では、LCとlangerin陽性dDCはお互いに補い合うことが判明し、接触皮膚炎における樹状細胞サブセットの役割が検証された。
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