研究課題
挑戦的萌芽研究
かゆみは中枢性と末梢性に分けられる。末梢性のかゆみ機序は、(1)肥満細胞と知覚神経C線維との相互作用、(2)表皮角化細胞や真皮線維芽細胞により産生される因子によるC線維の伸長と反撥、(3)炎症に伴うT細胞や好酸球の産生物質による。特に(1)は直接かゆみに関わり、肥満細胞が放出するヒスタミン、トリプターゼはこれらの受容体(H1R、PAR-2)を介してC線維を刺激し活性化C線維は神経ペプチド(サブスタンスP[ SP]など)を放出してこの受容体(NK1)を持つ肥満細胞をさらに刺激する。加えて、温熱刺激などを知覚するTRP受容体もかゆみ知覚にバリエーションを与えている(Steinhoff M et al : J Invest Dermatol126 : 1705-18, 2006)。近年中枢性のかゆみはオピオイド受容体のアンタゴニスト、アゴニストにより新薬が導入された。しかし末梢性のかゆみは抗ヒスタミン薬以降、TRP受容体のアンタゴニストが開発されつつあるが、新規薬に乏しい。我々は、表皮培養角化細胞をSPで刺激後、RNAを抽出しマイクロアレイ解析した結果、SP刺激でCCK2Rが最も強く発現することをセレンディピティ的に見いだした。かゆみ惹起神経ペプチドであるサブスタンスP(SP)刺激によってコレシストキニン受容体であるCCK2発現亢進がみられたことは、CCKがCCK2Rシグナリングを介して、負の制御としてかゆみ抑制作用を示す可能性を示唆した。ICRマウスの背部を剃毛し、そこにSP(100nm/部分)を皮下注し、マウスの後肢掻破行動を誘導した。SP皮下投与10分前に剃毛部に種々のCCKペプチドを塗布し、溶液のみのコントロールと比べたところ、掻破回数がとくにCCK8Sで減弱した。CCK皮下投与でも同様の効果をもたらすか、SPと同時にCCK8Sを皮下投与したところ掻破回数が減弱した。皮下投与でもかゆみ抑制効果を示すのであれば、角化細胞以外に肥満細胞も標的細胞となることが示唆された。マウス胎仔由来肥満細胞をcompound 48/80で脱顆粒刺激する系で、CCK8Sを添加したところ脱顆粒は抑制された。以上のことから、CCKはかゆみを抑制する能力をもち、少なくとも肥満細胞の機能を抑制して効果を示すのではないかと考えられた。加えて、ヒトケラチノサイトのインターフェロン-γ刺激によるIL-8産生系においてCCK8Sは抑制作用を有した。さらにヒト血管内皮細胞においてインターフェロン-γ刺激によるICAM-1発現をも抑制した。以上のことからCCK-CCR2R系によるかゆみ抑制は、肥満細胞のみならず、ケラチノサイトや血管内皮細胞における炎症抑制効果によってももたらされることが明らかとなった。CCKのかゆみ治療薬としての可能性について特許申請しており、創薬への端緒となった。実際の薬剤としてはCCK2Rに結合できる単純化学物質が望まれるが、今後その探索が重要となる。
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