研究課題/領域番号 |
22659209
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
福田 正人 群馬大学, 大学院・医学系研究科, 准教授 (20221533)
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研究分担者 |
三國 雅彦 群馬大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (00125353)
上原 徹 群馬大学, 健康支援総合センター, 准教授 (60303145)
成田 耕介 群馬大学, 医学部, 講師 (70345677)
亀山 正樹 群馬大学, 大学院・医学系研究科, 助教 (00455982)
武井 雄一 群馬大学, 医学部, 助教 (30455985)
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キーワード | 統合失調症 / 気分障害 / 対人関係 / 前頭葉 / 近赤外線スペクトロスコピィ |
研究概要 |
NIRSには、座位などの自然な姿勢のままで、発声や動作を行いながら脳機能を検査できるという特徴がある。こうした特徴を生かして、初対面の検査者との会話のやりとりを15秒交代で180秒間行なう課題の最中の脳活動をNIRSで検討した。会話という対人関係の脳基盤を検討する試みである。 会話の180秒間に応じて前頭極を中心とした酸素化へヘモグロビン(oxy-Hb)濃度の全体的な賦活を認め、さらに発話相に増加し聴取相に減少する賦活がそれに重畳する。こうした前頭葉賦活には個人差があり、TCIで評価した協調性cooperativenessが低い被検者ほど賦活が大きかった。性格としての協調性が低い被検者は、初対面の相手との会話に努力を要したことを反映した結果と考えられた。 さらに、こうした会話による賦活の個人差と自閉症傾向との関連をautismquotient(AQ)得点で検討すると、左側頭部領域において会話による賦活とAQ得点との間に負の相関を認め、その相関は対象を男性にのみ限定するとより強く認められた。これは、他人の視線など対人認知において重要な情報処理が上側頭溝周辺で行われていること、そうした対人認知の障害は男性でより強く認められやすいことと対応する所見と考えられた。 この課題で、統合失調症について検討を行なうと、全体としての賦活は、腹外側前頭前野や側頭葉に近い部位において減衰しており、PANSSで評価した陰性症状や不統合症状と負の相関を示すいっぽうで、前頭葉内側面に近い部位では減衰は目立たたなかった。また、発話/聴取相に応じた賦活が明瞭ではなかった。これらの所見は、統合失調症において実行機能や情報の受信・送信の切替え機能が不十分であることと、自我機能の過敏に対応する可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
fMRIを代表とする脳機能画像研究は意識のある状態における脳機能を検討できる点で画期的であったが、いっぽうで一人の被検者が臥位となり無動の状態でないと検査ができないという制約がある。NIRSの方法論の特徴を生かすことでこうした制約を越えて、自然な環境において実生活しているなかで脳機能を測定できることを示し、しかもそれを精神疾患へ応用できることを示した点で、順調な研究成果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
9.および11.で述べたように、現在のところ精神疾患については統合失調症についてすでにデータ解析を行っているが、うつ病・双極性障害・広汎性発達障害についてもNIRSデータの測定は行っている。今後は、これらデータの解析を行うとともに各疾患で得られたデータを比較することで、疾患毎の共通性と特異性を検討する。その結果にもとづいて、精神疾患において認められる対人行動について精神疾患に広く認められる共通する脳機能病態と、疾患特異的に認められる脳機能病態の両者を明らかにし、それらを臨床的な診断と治療へと応用する具体的な手段について検討を進めていく。
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