研究課題
近赤外線スペクトロスコピィNIRSには、座位などの自然な姿勢のままで、発声や動作を行いながら脳機能を検査できる特徴がある。この特徴を生かして、初対面の検査者との会話のやりとりを15秒交代で180秒間行なう課題の最中の脳活動をNIRSで検討した。会話という対人関係の脳基盤を検討する試みである。会話の180秒間に応じて前頭極を中心とした酸素化ヘモグロビン(oxy-Hb)濃度の全体的な増加を認め、さらに発話相に増加し聴取相に減少する賦活がそれに重畳する。健常者におけるこうした前頭葉賦活には個人差があり、TCIで評価した協調性cooperativenessが低いほど前頭部の賦活が大きく、自閉症傾向を示すautism quotient (AQ)得点が高いほど左側頭部の賦活が小さかった。これは、性格としての協調性が低い被検者ほど初対面の相手との会話に努力を要すること、自閉症傾向が上側頭溝周辺での対人認知の情報処理の障害と関連することを示している。精神疾患の脳機能をこの課題を用いて検討すると、①統合失調症においては腹外側前頭前野や側頭葉に近い部位で賦活が減衰しており、陰性症状や不統合症状と関連する、②気分障害においては前頭極周辺で賦活が減衰しており、うつ病では発話相・聴取相による変動がGAF得点と正の相関を示し、双極性障害では全体的な賦活が発症年齢と負の相関を示す、③広汎性発達障害では広い脳部位で全体的な賦活が減衰している、という結果が得られた。これらの所見は、実際に会話を行なっている最中という実生活に近い状況における精神疾患の脳活動の特徴を捉えたものである。精神疾患に広く認める生活障害の脳基盤を示唆するもので、NIRSの特徴を生かすことで他の脳機能画像法では得ることが難しいデータと言える。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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