研究課題
最終年度は、健常者12名と統合失調症患者12名にて、脳磁図による脳活動の計測、コンピュータによる自動計測システム(Cambridge Neuropsychological Test Automated Battery, CANTAB)とウェクスラー記憶検査法の言語性対連合記憶課題を用いた認知機能評価、そしてPositive and Negative Symptom Scale-Extended(PANSS-E)を用いた統合失調症臨床症状評価を行った。健常者と患者の群間では、性別、年齢、教育年数に差はなかった。その結果、統合失調症患者のPANSS-Eの平均は、陽性症状16、陰性症状17、解体症状8、興奮症状7、抑うつ不安症状8、その他の症状20であった。統合失調症患者は、健常者に比べ、視覚学習課題、問題解決課題における成績が有意に低く(p<0.01)、処理速度、空間作業記憶の成績が低い傾向が認められた(p<0.1)。一方で、動作速度、注意持続力、言語学習では健常者との間で差はなかった。また、一部の患者(8名)と健常者(9名)における脳磁図の予備的解析を行い、健常者では低周波数帯域(13-30Hz)における領域間の同期性が主に右半球に認められるのに対して、患者では領域間の同期性が両側の大脳半球間でも多く認められた。以上は、統合失調症患者では、視覚学習課題、問題解決、処理速度、作業記憶、学習などの広汎な認知機能に低下が認められること、低周波数帯域では両側半球間の相互作用が亢進していることを示し、今後すべての症例を用いた脳磁図データの解析で確認されれば、病態生理の解明において意義あるものである。
24年度が最終年度であるため、記入しない。