我々は、shatiはアスパラギン酸をアセチル化しN-acetyl aspastate(NAA)を合成する酵素であるということを明らかにした。そこで、shati遺伝子欠損マウスの脳内におけるNAAの含有量をHPLC法を用いて測定したところ、ほとんどの脳部位においてNAA含有量の低下が認められた。しかし、依存性薬物Methamphetamine(METH)投与後において、ほとんどの脳部位でNAA量に変化は認められず、shatiはNAA合成機能以外の新規機能を有しており、その機能を介してMETH依存形成を抑制していることが示唆された。そこで次に、以下の二つの方向性からshatiの新規機能の解明を試みることにした。 (1) Shatiの細胞内局在からのアプローチ:マウスshati遺伝子をクローニングし、COS7細胞に導入することで局在の検討を行ったところ、細胞質内において網状の局在を示し、チューブリンと共局在する事が明らかとなった。shatiのドメイン検索の結果、shatiはGCN5関連N-アセチルトランスフェラーゼ配列を持つことが予測されたことから、shatiがチューブリンをアセチル化する酵素である可能性が考えられ、今後は詳細に検討を行う予定である。 (2) Shati結合タンパク質の網羅的スクリーニングによるアプローチ:GSTプルダウン法により、マウス脳抽出液からshati結合タンパク質の網羅的な探索を試みたところ、エンドサイトーシス過程に関与するAP-2複合体の構成因子が複数同定されたことから、shatiがエンドサイトーシスに関与する可能性が示唆された。今後は引き続き、shati KOマウス等を用い、shatiの新規機能について行動学的、神経科学的に解明を行い、医療に応用可能なMETH依存に関わる新たな分子基盤を提示したいと考えている。
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