研究課題/領域番号 |
22659213
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
鍋島 俊隆 名城大学, 薬学部, 教授 (70076751)
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キーワード | shati / 薬物依存 / ドパミン / メタンフェタミン / N-アセチルアスパラギン酸 / プロテオミクス |
研究概要 |
前年度、新規薬物依存抑制因子shatiの新たな機能を明らかにするため、shati結合タンパク質の羅的な探索を試みたところ、エンドサイトーシス過程に関与するAP-2複合体の構成因子が複数同定されたことから、本年度はshatiとエンドサイトーシスとの関連について明らかにするため、shatiノックアウト(KO)マウスを用い行動学的、神経化学的な解析を行った。 神経細胞には依存性薬物であるメタンフェタミン(METH)の投与による過剰なドパミン遊離に対して、細胞膜表面上のドパミン受容体をエンドサイトーシスにより細胞内部に取り込むことで、METHの効果を軽減する機構が備わっている。そこで、このドパミン受容体の内在化に関するshatiの役割を明らかにするため、shati KOの側坐核における膜表面上のドパミン受容体の定量を行った結果、shati KOでは細胞膜表面上のドパミンD1及びD2受容体の量が増加していることが示された。さらに、行動薬理学的解析により、shati KOでは基礎行動量の増加、及びドパミンD1、D2アゴニストに対する反応性の増加が認められた。また、METH連続投与による行動感作の形成、および条件付け場所嗜好性について検討したところ、shati KOでは行動感作の増悪及び場所嗜好性の増強が認められた。 以上の結果より、shatiはAP-2複合体と協調し、ドパミン受容体の内在化を調節することで、METH依存形成に対し抑制的に機能することが明らかとなり、shatiの新たな機能を提示することができた。本結果は、shatiが薬物依存治療の新たな標的として有望であることを示唆するものであり、また、薬物依存以外の統合失調症やパーキンソン病など、多くのドパミン作動性神経系に異常を伴う精神疾患発症機序の解明の一助となる可能性があると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2年間の研究の結果、shati結合タンパク質の同定、そしてその結果から予想されるshatiの新規機能の同定、さらにはMETHによる依存形成に対するshatiの役割まで、明らかにすることができ、本課題の目標にほぼ達したと考えている。今後は結合タンパク質探索の結果同定された、他の因子に注目し、shatiの生化学的な機能について、さらなる解析を進めていきたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
マウスshati遺伝子をクローニングし、COS7細胞に導入することで局在の検討を行ったところ、細胞質内において網状の局在を示し、微小管と共局在する事が明らかとなった。さらに、結合タンパク質の探索の結果からも、チューブリンが同定され、shatiは微小管上で何らかの機能を有していることが示唆された。そこで、本課題の今後の推進方策として、微小管が関連する軸索の伸展などの細胞内イベントに対し、shatiがどのような機能を持っているのかについて、shatiノックアウトマウスを用い、行動学的、神経化学的に解析を進めていきたい。
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