研究課題/領域番号 |
22659214
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岩本 和也 東京大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (40342753)
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キーワード | 死後脳 / トランスポゾン / 精神疾患 / 統合失調症 / 神経細胞 / LINE-1 |
研究概要 |
ヒトゲノム中に存在する可動因子であるレトロトランスポゾンは、脳神経系の発達過程において活性化され、多様な脳神経系細胞の中でも特に神経細胞でのみ転移を起こすことが示されている。転移活性の変動は、脳神経系の高次機能に重大な影響を与えると考えられるが、精神疾患患者試料での検討は充分なされていない。本研究では、ヒトレトロトランスポゾンの中でも特に研究が進展しているLINE-1に焦点をあて、患者死後脳における転移活性の評価を行っている。 昨年度までに実施した研究において、統合失調症、双極性障害、大うつ病患者及び健常者凍結死後脳組織(前頭葉部位各15例)から抽出したゲノムDNAを用いて、LINE-1配列のゲノムコピー数定量を行い、統合失調症患者において脳での有意なLINE-1ゲノムコピー数の上昇を認めている。また、本年度は米国スタンレー財団より独立した合計100例の患者・健常者試料を入手し、神経細胞ゲノムでの検討を行ったところ、統合失調症死後脳でのコピー数上昇を追試することができた。 LINE-1のコピー数増大が統合失調症の病態の原因か結果かは不明であるが、高いLINE-1コピー数の増大を示した検体においては、ゲノム中への挿入部位が問題となる可能性が考えられる。そのため来年度は、LINE-1挿入配列のゲノムマッピングを行う実験系の確立を目指し、予備的検討として2-3サンプルでのゲノムマッピングを行うことを目標とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
トランスポゾン動態の異常の有無を検討するのが初期の目的であるが、精神疾患患者死後脳でのLINE-1コピー数の異常を2つの独立したサンプル群で既に確認している。来年度はコピー数以上の分子メカニズムを追うと共に、疾患の原因か結果かを詳細に検討する段階に入っている。
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今後の研究の推進方策 |
当初予定していた実験は全て終了し、トランスポゾン動態と精神疾患、特に統合失調症において何らかの関わりがあることを明らかにした。今後は、初期計画を発展させ、トランスポゾンのゲノムマッピングや投薬での影響評価を行っていく。
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