研究概要 |
研究代表者のグループは,表示媒体に利用されている液晶材料のうち両親媒性液晶化合物の細胞膜への親和性と集積性に着目し,これら化合物にヒト腫瘍細胞抑制活性を見い出し,現在その作用機構並びに腫瘍特異性の高い化合物探索を行っている.本研究では,これら液晶化合物の生物学的作用に加え,その磁場・電場配向性に着目し,規則的な金属の集合体からなる新規金属錯体液晶を創製し,磁気共鳴画像(Magnetic Resonance Imaging,MRI)診断における新規造影剤の開発を目的とする.更に,MRI診断において抗腫瘍作用と配向特性を利用した多機能医薬品への応用発展性の可能性を探索する.平成22年度の研究の結果,以下の点を明らかにし,報告した. (1)ヒト肺がん細胞A549の増殖を両親媒性液晶化合物が抑制効果を示し,その作用は液晶性と相関性が認められた.さらに正常細胞WI-38の増殖には影響しなかったことから,腫瘍細胞特異性が示唆された. (2)ヒト慢性骨髄性白血病細胞K562の増殖に対しては,p38 mitogen-activated protein kinaseとc-Jun N-terminal kinaseの活性化を通してアポトーシスを起こさせていることが明らかとなった. 平成23年度は,これら成果を踏まえ新規金属錯体液晶の創製に向けさらなる検討を行う.
|