MRIを用いてiPS細胞(人工多能性幹細胞)を画像化するために、iPS細胞のSPIO(酸化鉄製剤)標識を試みた。プロタミトンとSPIOをゼラチン塗布dish上でfeeder細胞のない状況で単独培養されたiPS細胞に加え8時間インキュベートしたところ、プルシアンブルー染色によりiPS細胞内に鉄(SPIO)が取込まれているのが確認できた。そこでSPIO標識されたiPS細胞をマウス尾静脈から投与して直後にMR装置(1.5T)で撮像を試みたが、iPS投与による画像の変化は認められなかった。FDG標識iPSを用いたPETイメージングにより、尾静注したiPS細胞のほとんどが肺にトラップされることを確認しており、MRIを用いた場合は肺にある空気のsusceptibility effectにより、陰性信号としてiPS細胞を捉えられなかったものと考えられる。今後は経静脈性経路以外の注入方法を検討する。 本研究ではiPS細胞を分化誘導した後に、その細胞が臓器や腫瘍への移行性を検討することも目的としている。そこでiPS細胞の神経細胞への分化誘導を試みた。通常、feeder細胞の上で培養されるiPS細胞を細胞浮遊液の状態で血清不含の培地で培養することにより、神経系細胞への分化を行った。現在、分化に成功したかどうかを確認中である。また免疫抑制剤であるサイクロスポリンAを使用することによるiPS細胞の心筋細胞への誘導が報告されていることから、心筋への分化誘導を試みる予定である。
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