平成22年度は、3種類の抗がん剤(CDDP、epiADR、MMC)とガラクトース、パルミチン酸の混合物を様々な混合比で混和し、シリンジと三方活栓を用いたポンピング法にてホイップ(マイクロバブルと液体との界面に抗がん剤粉末が封入され、液体に溶解しない状態)として安定する配合条件があるかどうか検索した。現時点の暫定的結果としては、事前の文献検索から予想された通り、単純な混和、撹拌のみでは安定したホイップ化は困難であり、現時点ではいずれの薬剤も比較的速やかに液体に溶解してしまっている。特に、単剤として最も肝細胞がんに対する抗腫瘍効果が高いとされているCDDPの粉末製剤は、粒子径が大きく、マイクロバブルのとのサイズのミスマッチからホイップ化は困難であることが判明した。現在、epiADR、MMCにつき、超音波撹拌なども導入する事を計画しており、さらに専門家の意見を求めることとている。 一方、上記にさらにヨード化ケシ油を加えた検討では、epiADRを用いた混和実験にて、濃度の異なる2層には分離するものの、それぞれの濃度で24時間以上エマルジョンとして安定するという結果が得られている。エマルジョンの安定化にはパルミチン酸の界面活性効果が大きく影響している可能性が高いが、マイクロバブルの存在がどの程度安定化に関与しているかを調べるため、平成23年度は、これに超音波診断装置を用いたマイクロバブル破砕を行い、溶液中の抗がん剤濃度の上昇が得られるかどうかを薬理学的に検討する予定である。
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