在宅医療において、早期発見、早期治療のためのX線診断は不可欠である。しかし、従来のX線撮影装置は、高電圧電源とX線管球が必要なため、ポータブル型のものでさえ大きな装置になり、家屋等でのX線撮影は困難を伴う。一方で、高電圧電源とX線管球を使わずにX線を発生させる方法に、焦電性結晶を用いる方法がある。これを用いれば、X線撮影装置を大幅に小型化できる可能性がある。本研究では、従来とは全く異なる原理により、X線撮影装置を大幅に「小型化することによって、AED(自動体外式除細動器)のように持ち運びが可能で、撮影場所を選ばない、在宅医療、救急医療等において撮影可能な可搬型X線撮影装置の開発を目指す.今年度は、基礎実験を行うための装置を作製し、焦電性結晶雰囲気の気圧と温度変化率をパラメターとして、焦電性結晶により発生するX線の測定を行った。気圧を10から25 Paまで変化させてX線の測定を行ったところ、気圧が低いほどX線のエネルギーが高く、強度も高くなることがわかった。また、温度変化率を0.5から2.7K/sまで変化させてX線の測定を行ったところ、1.5K/sのときにX線のエネルギーと強度が最大になり、適切な温度変化率が存在することがわかった。焦電性結晶表面に発生する電圧は、簡単な式から計算できるため、計算値と実験で得られた値を比較すると、ほぼ一致することがわかった。このことから、焦電性結晶のc軸方向の厚さを変化させることにより、発生エネルギーを制御できることが示唆された。現在のところ、得られたX線の最大エネルギーは20keV程度であるため、X線撮影を行うためには、焦電性結晶のc軸方向の厚さを現在の5から10倍程度にすればよいことがわかった。
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