研究課題
従来、温熱による細胞死の主要因はタンパク質変性であると信じられてきた。最近、我々は科学的新事実に基づき、温熱による細胞死の主要因がDSBであることを提唱している。このような独創的な研究アプローチからDNA損傷認識および修復機構関連遺伝子のノックアウトマウス由来の細胞を用いて、温熱による放射線感受性の増感機構の解明を目指している。この増感メカニズムにおける各種遺伝子の関与を明らかにするばかりか、(1)DSB生成過程の促進によるものなのか、(2)DSB修復過程の抑制によるものなのかが解明され、放射線生物学の学術的な理解がより深まることが期待できる。「DNA損傷認識」および「修復機構関連遺伝子」に注目して、これらのノックアウトマウス由来の細胞を用いて、DSBの生成量および修復量を調べ、どの遺伝子が本当に温熱による放射線増感効果に関与しているのかを明らかにすることを目的としている。今回、温熱の殺細胞効果における各種遺伝子の関与を明らかにするため、DNA二本鎖切断非相同末端結合修復(LIG4)、相同組換え修復(Rad54)などにかかわる遺伝子のノックアウトまたは変異細胞およびそれぞれの親株細胞を用い、各種細胞を温熱処理し、コロニー形成法で調べた。また、DNA二本鎖切断をヒストンH2AXのフォーカスを指標に温熱処理後の修復について調べた。その結果、非相同末端修復Lig4欠損しても、温熱では正常型と感受性が変わらないのに対して、組換え修復Rad54欠損すると増感することを明らかにした。このことは相同組換え修復が温熱の殺細胞効果を高める標的となることが示唆された。また、組換え修復Rad54欠損すると温熱処理後のヒストンH2AXのフォーカスが消失しないことを明らかにした。
3: やや遅れている
温熱単独での各種遺伝子の効果についての検討に時間がかかったため、放射線との相互作用についてまで明らかにすることができなかったため。
温熱による放射線感受性の増感機構における各種遺伝子の関与を明らかにするとともに、DSB生成および修復過程における各種遺伝子の関与を明らかにする。
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