超偏極MRI技術の開発を進めているヨーク大学のグループの研究が滞っており、今年度は、超偏極技術を用いたin vivoイメージングを行う環境が構築できなかった。このため、本研究の最終目的である抗がん剤の体内動態のin vivo可視化に関する検討に関して直接的な成果はあげることができなかった。しかし、NMR-SABRE超偏極技術の導入に必要な基礎的検討を進めた。 まず、生体内に超偏極プローブを投与することの安全性について検討した。NMR-SABREの原法では、メタノールやtetrafluoroborateを溶媒としているが、毒性の問題でこれらを人体に投与することができないので、生体内に投与が可能な代替物質についての検討を行った。これらの物質では、超偏極の効率の低下や超偏極の持続時間の短縮が考えられ、本年度の検討では理想的な代替物質を決めることはできなかった。 続いて、超偏極反応時に添加する触媒作用を有する物質についての検討も行った。触媒能力は維持しながら、生体には吸収されず毒性を抑えることができる化合物が理想的と考えられたが、これについても最終的な化合物を決定するには至らなかった。 さらに、抗がん剤感受性予測を行う際に評価指標についての検討も開始した。マウス移植腫瘍を摘出し、組織を粉砕した後、NMRによる解析を行い、腫瘍の代謝活性を評価するのに適当なピークを示す生体内物質を探した。腫瘍細胞で高いピークを示すコリンなどが有力な候補物質として挙げられた。
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