1.4つのメチル化マーカー(GSTP1、Rassf1a、RARb、14-3-3-σ)について、新規Primerを設計し、One Step Methylation Specific PCR法(以下OS-MSP法)により、メチル化DNAの定量を行うための条件設定を行った。 2.OS-MSP法により、ホルマリン固定・パラフィン包埋後の乳癌腫瘍組織(以下FFPE)や新鮮凍結後の乳癌腫瘍組織、及び、血清中の癌由来DNA中のメチル化DNAを検出し定量することに成功した。さらに、メチル化DNAの割合(メチル化率)の算出も可能になった。 3.エストロゲンレセプター陽性(ER+)乳癌において、腫瘍組織のGSTP1のメチル化が術前化学療法(タキソール⇒FEC療法)に対する効果予測因子となる可能性が示唆された。これにより、治療効果が低いと予測される患者を、その対象から除外することが可能になり、その結果として、治療全体の有効率が上昇し、治療の個別化にも寄与するものと思われる。 4.ホルモン単独療法によって治療された手術可能ER+乳癌において、腫瘍組織でのGSTP1のメチル化が、予後予測因子として有用か否かを検証したが、現時点では予後との関連は認めていない。今後、症例数を増やし、さらなる検討を加える予定である。 5.血清中の癌由来DNA対して、3つのメチル化マーカー(GSTP1、Rassf1a、RARb)によりメチル化を検討した結果、これらのマーカーのメチル化が予後予測因子として有用であることが示唆された。この結果は、これらのマーカーを用いることにより、再発リスクの予測が可能になることを意味している。すなわち、化学療法などのより強力な治療を必要とする群と、副作用の軽度なホルモン療法のみで治療が可能な群を選別することできるようになり、治療の個別化に繋がると考える。
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