研究概要 |
早期乳がん患者を対象とし、OS-MSP法を用いて、手術前と手術後の血清および手術時に摘出した腫瘍における遺伝子のメチル化プロファイルを検討した。また、転移再発乳がん患者の血清における遺伝子のメチル化プロファイルを検討した。使用したメチル化マーカーはGSTP1、RASSFIA、RARβ2。 ●早期乳がん、転移再発乳がんの血清中の遺伝子のメチル化陽性率(3つのうちいずれかのマーカーにおいてメチル化が検出された場合を陽性と定義)は、StageI/II/III/IVでそれぞれ、24%、26%、18%、55%であり、現在、臨床に用いられている腫瘍マーカー(CEA,CA15-3)よりも、StageI/IIにおいて高い陽性率を示した。また、転移再発乳がんでは、腫瘍マーカーと併用することにより、78%の陽性率が示された。これは、再発の早期発見及び治療強度の個別化に寄与する可能性が示唆された。 ●早期乳がんを対象に、上記3マーカー以外に、DNA損傷によりp53によって誘導される14-3-3δ(癌抑制遺伝子)の発現と術前化学療法(タキソールーFEC)に対する感受性を検討した。その結果、14-3-3δの発現はpCR(組織学的完全消失)率との有意な逆相関を示し、化学療法の抵抗性に関与することが示された。また、GSTP1の発現と術前化学療法(タキソールーFEC)に対する感受性を検討した。その結果、ER陰性乳がんにおいて、GSTP1陰性乳がんは陽性乳がんより有意に高いpCR率を示した(80%vs30.6%)。GSTP1のメチル化が有効な効果予測因子となる可能性が示唆された。 ●上記マーカーは、乳がんの早期診断や治療モニタリング、治療効果予測に有用である可能性がある。
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