Shaggy aorta症候群は、確立した治療法が無い予後不良な疾患であり、その病態機序の知見は極めて乏しい。本研究の目的は、Shaggy aorta症候群の分子病態機序を解明し、それに基づく新たな治療法を開発することである。本年度は、以下の3つの研究計画を前年度に引き続いて実施した。 【ヒト標本の組織学的解析とASC/Caspase-1解析】手術時に動脈硬化性大動脈のヒトサンプルを収集した。サンプルは、蛋白解析用に凍結保存し、同時に病理学的解析ならびに免疫組織学的解析のためホルマリン固定し組織切片を作製した。Shaggy aorta症候群の病理組織では、大動脈内腔にコレステリン結晶に富んだ粥状硬化巣が進展し、コレステリン結晶の形成端に一致して、顕著な炎症細胞浸潤が確認された。 【培養マクロファージにおけるASC/Caspase-1系の役割解明】マクロファージ伸展刺激後の炎症応答(IL-1 beta分泌亢進)にASCが必須であることを、ASCノックアウトマウス由来の培養マクロファージを用いて明らかにした。 【モデルマウスにおけるASC/Caspase-1系の役割解明】マウス腹部大動脈局所をリン酸カルシウム結晶で刺激し慢性炎症を惹起するモデルを作成し、野生型マウスとASCノックアウトマウスを比較解析した。その結果、炎症細胞浸潤、中膜弾性線維の破壊において明らかな差は認められなかった。現在引き続き解析を実施している。
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