本研究の目的は、心筋梗塞に対するインジェクタブルゲル注入療法に最適なゲル化材料を設計開発し、その梗塞部位リモデリングに与える影響をラットおよびウサギ心筋梗塞モデルにより実証することである。インジェクタブルハイドロゲルを心筋梗塞部位へ注入することで心機能が回復することが報告され、その治療効果が注目されてきた。しかしながら、これまで検討されてきたゲルは、組織接着性が無くまた脆弱なものであり、その硬化は必ずしも高いとはいえないために、本プロジェクトでは、生体に存在するタンパク質の高次構造を模倣した自己組織化ペプチドを用いて高強度かつ生体親和性を有するハイドロゲルを調整し評価する。新たなペプチドゲルの最適な組織親和性と分解性を検討して最適化する。 現在得られているゲル化材料を用いたラット心筋梗塞治療実験を進めるとともに、ハイドロゲル物性を広範囲に制御するための高次構造形成部分を探索した。全てのペプチドをFmoc固相法によって合成し、された。樹脂(PAL-PEGresin)へFmoc基でN末端が保護された各アミノ酸を、DMT-MMを縮合剤として調整し、TFA/水(95/5)で脱樹脂・脱保護を行った。Peptide-4ハイドロゲル(Ac-(RVEIKVDI)2-CONH2)は、1.0および2.0w%で、スタート溶媒DMSOにおいて速やかにゲル化することが貯蔵弾性率(G')および損失弾性率(G'')の経時変化より明らかとなった(周波数1Hz、Strain1%、37℃、120分測定)。さらに、Peptide-4ハイドロゲルの自己組織化繊維構造がAFMにて確認され、ラット心筋梗塞部位への注入後には組織内で効率よくゲル化していることが切片形成より明らかとなった。サイズの問題から、ラットのみにならずウサギを用いて次年度は心機能向上に関して検討を進める。
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