研究課題
肝胆膵外科における拡大肝葉切除の際、最も重篤な合併症である肝不全を予防する術前処置としての門脈塞栓術(Portal vein Embolization; PE)導入以降、術後肝不全は減少したが、その有効性が明瞭なエビデンスとして確立しているわけではない。PE前後の肝再生等の形態的検討・機能的検討の報告はあるが、その詳細な分子機構は未だ明らかではなく、当初各種オミクス解析により関連する分子機構を明らかにしようとした。しかしながら、近年、転写因子Nrf2の肝胆道系における増殖、再生、また各種の癌におけるその発癌、進行への関与が示唆されてきた。またNrf2は分化、増殖シグナルであるNotch1を介して肝切除後の肝再生に寄与している事が報告され(Wakabayashi et al. 2010)、細胞増殖におけるNrf2の役割が明らかになりつつある。そこでKeap1-Nrf2システムがPE後の肝増殖に関与するのではないかと考えた。マウスの全肝容積の約60%を占める左内側葉および左外側葉へ流入する門脈血行路を結紮遮断するモデル(Portal vein Branch Ligation; PBL)を作製し、コントロールとして単開腹モデル(sham)も同時に作製、上記手技をNrf2^<-/->マウス(Nrf2ノックアウトマウス)、Keap1^<f/f->Albマウス(肝特異的Keap1ノックアウトマウス)、Wild typeマウスで行い非結紮葉の肥大の程度、mRNA発現、タンパク質発現につき比較検討した。個体数を確保できたNrf2^<-/->マウス、Wild typeマウスに対して解析を行ったところ、PBL施行群の非結紮葉においてWildtypeマウスではNrf2^<-/->マウスに比べ有意な肥大を認めた。またNrf2の核での蓄積は認められなかったが、PBL施行後のWild typeマウスにおいて、非結紮葉では結紮葉に比べNrf2の標的遺伝子Nqo1のmRNAの発現、タンパク質量ともに有意に増加し、術後7病日の段階では門脈結紮に対する反応が終息しつつある事が示唆された。
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