研究概要 |
膵癌は現在も有効な治療法がなく癌死の上位を占める。特に癌間質相互作用により高い浸潤能、転移能、治療抵抗性を有し、最近その責任細胞として癌関連膵星細胞が報告された。本研究ではこの膵癌癌間質相互作用を主導する癌関連膵星細胞pancreatic stellate cell(以下PSC)に注目し、これをターゲットとしたドラッグデリバリーシステム(DDS)の開発を行う。特異的癌関連PSCの同定とそれをターゲットとしたDDSの開発は世界で例がなく、既存の治療法では非常に難治である膵癌に対する治療法を飛躍的に前進させることが期待される。本年度は間葉細胞や内皮性幹細胞のマーカーを用いて、切除組織より樹立したPSCのprospectiveなisolationとphenotypingを行った。さらに純化したPSC集団を、膵癌細胞と共培養もしくはマウスに共移植することで、特定のPSCによる癌細胞の増殖・浸潤・EMTへの関与を検討し、その責任分子を同定した。PSC接着特異性を高めるため母体となるhsp16.5のC末端にリンカーを介してcyclic-RGD配列を遺伝子レベルで組み込んだ人工ウイルスを作成した。さらに癌関連PSC特異性を高めるためVitamin A類似体を付加し、その特異性をin vitroおよびin vivoで確認し,同時に薬剤を内包した。また、PSC細胞特異的な生物活性によるキャリアー崩壊システムとともに内包する薬剤のPSC特異的放出機構を強化した。
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