研究課題/領域番号 |
22659245
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
調 憲 九州大学, 大学病院, 講師 (70264025)
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研究分担者 |
前原 喜彦 九州大学, 医学研究院, 教授 (80165662)
武冨 紹信 九州大学, 大学病院, 講師 (70363364)
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キーワード | 肝機能 / 肝再生 / オートファジー / 細胞老化 |
研究概要 |
我々は、これまで肝再生中の肝細胞において、エネルギーの調達・蛋白質の再編成を担う機構であるオートファジーが活性化していることを学会等で報告してきた。そこで、今回当初の計画通りに、肝臓特異的にオートファジーをノックアウトした系(マウス)を用いて肝再生における意義を検討した。 我々の予想通りに、オートファジーは、肝再生中においてもATPの産生及び蛋白質再編成という重要な役割を担っていた。これらは、肝切除術後の生存率の低下・肝細胞の分裂の停滞・細胞周期の停止・肝組織β酸化の減少などのデータによって証明された。 また、予想に反して、オートファジーノックアウトマウスでは肝再生自体は遅延している反面、肝細胞個々の大きさが増大していた。p21蛋白質の活性化・ユビキチン化蛋白質の増加senescence系蛋白質の蓄積などから、肝細胞がsenescence状態に陥っていることが判明した。この現象は、オートファジーの不活化によって、機能を制御できなくなった細胞がなんらかの防御機構のひとつとして、senescence(老化)状態に陥り、周囲細胞への悪影響を取り除こうとしていることが示唆された。 これまで、肝再生中だけでなく、肝臓の機能維持においてオートファジーが重要な役割を担っていることはたびたび報告されたが、今回のようにsenescence(老化)との関連について深く検討した文献は認めていない。肝細胞及び肝臓の機能における、機能促進と機能停止という両輪を担うオートファジーとsenescence(老化)は今後の研究に欠かせない生命現象と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、オートファジーを肝臓特異的にノックアウトしたマウスを用いて、肝再生における意義を検討することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、肝細胞及び肝臓の機能における、機能促進と機能停止という両輪を担うオートファジーとsenescence(老化)について深く研究していく予定。いずれもストレス条件下で誘導される機構であるが、その役割は相反するものである。両者を条件に応じて制御することができたら、肝臓の再生についてはもちろん幅広い活用が可能と考えられる。
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