本年度はオートファジーの肝再生における役割を明らかにするために、Atg5ノックアウトマウスを作成した。この結果、90%肝切除を行うとノックアウトマウスは全例死亡した。 この機序解明のために70%肝切除モデルで以下の結果を得た。ノックアウトマウスではオートファゴゾームが消失、BrdUの取り込みが遅延、G2/M期の減少、p21の活性化を認め、細胞周期の遅延を認めた。ATP産生の障害、β酸化の障害、ミトコンドリアの膜電位障害、ネットワーク形成不全を認めた。この結果トランスアミナーゼの上昇、アルブミン産生低下、アポトーシスの増加を認めた。さらに細胞周期の遅延にもかかわらず、肝重量は有意に増加していた。肝細胞あたりの容積の増大を認めた。この分子機序として肝細胞の細胞老化を考えた。cell scenescence関連のβgalactosidaseが強陽性、IL8産生の増加、Poly Ub 蛋白の増加など細胞老化の表現型が強く認められた。以上まとめるとオートファジーは肝再生期において主にミトコンドリアのエネルギー産生に重要な役割を果たしている。オートファジーが傷害されると、肝再生期のエネルギー調達が傷害され、細胞周期、分裂の遅延が起きている可能性がある。肝臓ではいまだ不明の細胞老化の機序がオートファジーの傷害によって起こっている可能性がある。 現在高齢マウス、脂肪肝マウスにおいてこのような機序を検討しつつある。さらには近年、長寿遺伝子であるSIRT1がオートファジーを制御していることが報告されているため、SIRT1遺伝子を活性化することでオートファジーの促進をもたらし、病態の解明、制御に繋がるものと考え、次のステップにすすんでいるところである。
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