研究概要 |
最終年度である今年度は、前年度の前臨床試験において得られた知見、即ちバイオナイフが悪性中皮腫の治療において有効である理由、分子機序に関する詳細な検討を実施した。 その結果、 1)バイオナイフはuPAによる活性化を受けるが、腫瘍由来のuPAは必ずしも必要では無く、腫瘍が発現するuPA受容体(uPAR)が必須であることが明らかになった。 2)バイオナイフが感染すること、そして膜融合を来すこと、それ自身で腫瘍由来のuPAが発現することが明らかとなった。 この分子メカニズみを解析するため、センダイウイルスのゲノムセンサーでありRNAヘリカーゼでもあるRIG-Iのdominantnegative変異体(RIG-IC)を発現するバイオナイフを構築し、同様の実験を行うと、腫瘍由来uPAの発現は消失した。またRIG-Iの下流で活性化するNF-kB活性阻害薬を使用すると、同様にuPA発現は消失した。 以上から、バイオナイフは感染そのものによりuPAR発現腫瘍細胞を強力に細胞死へ誘導することが明らかとなった。 以上の成績をまとめ、英文原著論文として公表した(Morodomi Y,et aL. MolTher 2012,in Press)。
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