本研究は、ケーブルやコネクターを一切必要としない、究極の完全体内埋込型補助人工心臓の完成を目指して、新たな原理を用いて胸腔内や腹腔内など体深部に埋込まれた補助人工心臓に対して直接エネルギー供給を行うと共に、情報伝送を行う装置の開発を目的とする。 平成23年度は昨年度に引き続き磁気共鳴現象によるエネルギー伝送のin vitro試験を行った他、伝送信号用回路への情報伝送機能の付加と完成モデルの試作を行った。 エネルギー伝送の効率向上に関しては、送信コイル-受信コイル間でのエネルギー伝送効率の向上と、送信機および受信機のエネルギー変換効率の向上の二点について考慮する必要がある。送信コイル-受信コイル間のエネルギー効率に関しては、そもそも受信コイルを小型化したため、効率向上は非常に困難であり、限界があることが判明した。また、送信機及び受信機のエネルギー効率の向上については、いずれも100kHz程度の低周波では90%以上と高効率のものが実現したが、当初の目標周波数である、数MHzになると効率が低下し、改善は実現できなかった。 伝送信号用回路への情報伝送機能の付加に関しては、情報伝送機能の付加方法として、発信器の発振周波数を切り替えるとエネルギー伝送量が変化する性質を利用して実現した。周波数の切り替え回路及び伝送量の変化は観察でき、伝送信号用回路へ情報伝送機能を付加することは可能であるとの結果が得られた。 完成モデルについては、試作を行ったものの、システム全体の効率が低いため、総合的には従来のエネルギー伝送方式の方が有利であるとの結論となった。
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