研究概要 |
イヌのiPS細胞立し、それを生物実験モデルに応用するなどというアイディアは世界的に見ても他に例を見ないものである。iPS細胞はマウスやヒトで樹立され、その実用化が期待されている。しかしながら大型動物のiPSがなかったため、安全性や長期予後に対する十分な評価ができていなかった。そこで我々はビーグル犬細胞のiPS細胞にチャレンジした。従来の4因子(Oct4, Sox2, Klf-4, c-Myc)を用いる方法ではイヌのiPSは作れないため、分化阻害に関わる低分子化合物を組み合わせることにより、iPS細胞の安定樹立に取り組んでいる。さらに、それを組織工学の手法を用いて、気道再生に応用する試みが本研究である。 本年度以下三点を行った。 1. ビーグル犬iPS細胞の作製(島田) ビーグル犬の精巣、肺、消化管上皮より線維芽細胞を取り、それに遺伝子導入してiPS細胞を作製した。導入法としては従来のレトロウイルスを用いる手法だけでなく、RNA法の検討も開始した。 2. 代用気管の設計と作成(中村) iPS細胞播種用の新しいタイプの人工気管(L=50mm)を作成して力学物性を天然の気管と比較した。圧縮試験は水平垂直長軸の3方向のデータを解析した。現在、動物実験で物性の変化を検討している。 3. iPS細胞による組織化上皮化の促進案験(中村) ビーグル犬の気管欠損モデルで代用気管のコラーゲンマトリックスにiPS細胞と自己骨髄由来の組織幹細胞を含浸させる研究の準備を進めている。気管支鏡、MRI,擦過細胞診で気管線毛の運動能を評価する。埋入12ヶ月の犬は一部を屠殺して病理学的に再生組織を検討するとともに、切除気管の力学物性を解析する。成犬のiPS細胞樹立に予想外に時間がかかり、埋入実験は行えなかった。
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