肺癌EGFR遺伝子変異の超高感度検出法を開発すべく、ビデオマススコープによる低分子細胞成分パターンの模索に関する実験を施行した。肺癌細胞株は、EGFR遺伝子変異を有さない細胞株としてCalu-6、A549の2種類、EGFR遺伝子変異を有する細胞株としてPC-9、NCI-H820の2種類を使用した。質量分析法を用いた1細胞内低分子パターン検索の前段階として、それぞれの培養細胞集団から得た細胞内抽出液を用いて、液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS法)による細胞内低分子パターンの高感度網羅的解析を行った。得られた細胞内成分のデータは細胞株毎にグループ化し、またアミノ酸の測定パターンから固有の蛋白質を既存のデータベースに照らし合わせる事で細胞株およびEGFR変異別に特徴的な分子について検討した。EGFR変異を有さない細胞株ではアミノ酸としてserine、glutamine、histidine、asparagine、hydroxyproline、N-acetylputrescine、threonine、tyrosineが、タンパク質としてCCDC148、protein chloride intracellular channel protein 1が、その他adenine(プリン体)やpantothenate(ビタミン類)が特異的に存在する可能性が示唆された。一方、EGFR変異を有する細胞株ではglucoseや脂肪酸の運搬に関わるcarnitine類やMFN1、actin-related protein 2/3 complex subunit 3が特異的に存在する可能性が示唆された。これら特定されたがアミノ酸や蛋白がEGFR変異に関連するかは更なる検討を要するが、1-細胞成分からの分析でも再現性が得られれば、ビデオマススコープを用いた測定が超高感度検出法として応用可能と考えられる。EGFR遺伝子変異の有無を表わす最:も効率的な指標の選定及びそれを再現できる効果的な1細胞分析が必須であり、質量分析法の設定とともに進行中である。
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