研究概要 |
くも膜下出血は、高率な死亡率と後遺症率を有する重篤な疾患であり、働き盛りの生産年齢層に好発することから社会的損失が大きい。近年の脳ドック普及や画像診断の発達により未破裂脳動脈瘤の症例が急増している。各脳動脈瘤の破裂の確率を外科治療前に予測することは困難で、非外科的治療は皆無であり、また破裂を予防回避するシステムは構築されていない。我々は、先行研究において、ラット、マウスの脳動脈瘤の発生増大に血管壁の炎症反応が深く関与することを報告した。従来の研究では、脳動脈瘤誘発処置後に一定の期間をおき動物を安楽死させ、遺伝子、蛋白発現、組織学的変化を検討してきた。本研究を推進するため脳動脈瘤の発生増大破裂過程をMR画像を用い細胞分子レベルで追跡することを着想した。本研究の目的は、我々の高率に脳動脈瘤を発症するモデル動物(Hashimoto N et al Surg Neurol 10:3-8,1978;Hashimoto N et al J Neurosurg 67:903-905,1987;Morimoto M et al Stroke 33:1911-1915,2002)を用い、脳動脈瘤発生増大破裂に至る過程を生体分子イメージングを用い明らかにすること、脳動脈瘤発生増大破裂予測システムを構築することである。脳動脈瘤の発生増大破裂に至る経過を生体で追跡するために、高率に破裂する脳動脈瘤モデルを確立し、頭蓋内脳動脈瘤の形態変化、増大を核磁気共鳴装置を用いて追跡し、脳動脈瘤壁における細胞分子の動態を分子イメージングを用いて追跡する。平成22年度においては、自然発症くも膜下出血モデル動物の作成準備をラットモデルを用いて行った。また、超高磁場(7テスラ)動物実験用MR装置(Varian社製Unity INOVA)を用い、ラット、マウスにおける微小脳動脈瘤の画像追跡を検討し、ラットにおいても脳動脈のある程度の微細構造の解析が可能であることを確認した。
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