研究課題
細胞内で生じた異常タンパクを処理する「タンパク品質管理」を担うautophagy機構と各種の神経疾患との関わりを明らかにし、autophagy現象の空間的な分布や程度をin vivoで画像化する新たなイメージング手法を確立するため以下の研究を行った。平成22年度は脳梗塞(脳虚血状態)におけるautophagy現象を画像化することを目指し、autophagyマーカーであるLC3とそれを標識するGFPとの融合タンパクを発現するトランスジェニックマウス(GFP-LC3 Tgマウス)を用いて、中大脳動脈を選択的に閉塞させた脳梗塞モデルを作成し、マウス個体の外表面から蛍光を検出できる実体蛍光顕微鏡を用いて脳梗塞発生後の状態を経時的に観察した。脳虚血後に生じたGFPシグナルはautophagosome形成時にLC3-Iがリン酸化されることにより生じるLC3-IIの集合を反映したものと考えられ、脳梗塞により急性に生じたautophagyの様態をGFP-LC3発現部位の変化として画像化した。結果的に、脳虚血部位に一致して生じたGFP蛍光シグナルはin vivoでは虚血後1日をピークとして観察され、その後時間と共にシグナルは減衰した。摘出した脳虚血部位のウエスタンブロット解析では、autophagyマーカーであるLC3-IIの量的変化はin vivoでの観察と一致して虚血後1日にピークを示し、組織学的検討では、グリア細胞でなく神経細胞においてGFP-LC3陽性所見を認めた。また、GFP-LC3とTUNELの両者の陽性細胞は虚血中心部よりもペナンブラ領域に多く認めた。本研究の成果として、脳梗塞後のautophagy機構をモニターできるin vivoイメージング手法を新たに確立したと同時に、脳虚血とautophagy機構の病態研究においても大変有用であることを明らかにした。
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