研究概要 |
BBBの時空間的制御により,薬物に治療抵抗性を示す多くの中枢神経疾患の画期的な治療法となることが予想され,例えばてんかんや脳腫瘍に対し,従来の抗てんかん薬,抗癌剤にて十分治療ができる可能性がある.本件旧は,温度によって脳局所のBBBを可逆的に制御し,中枢神経系疾患のドラッグデリバリーシステム(DDS)の構築を行うことを目的とした. In vitroの系では,BBBを構成する主成分である内皮細胞を培養し,温度を変化させて電気抵抗値を測定した.15℃,1時間の低温暴露により電気抵抗値は下がり,その後37℃に戻すと数時間かけて抵抗値も元の値に戻った.内皮細胞の電気的特質はBBBの透過性に呼応して変化すると考えられ低温によってBBBが可逆的に変化したことを示している.tight junction proteinであるClaudin-5とZo-1の発現量と発現部位を37℃から15℃まで、温度を変えて確認した.内皮細胞とastrocytoを合わせて培養し,物質透過性試験を行った.温度による透過性変化はまだ測定していない. In vivoの実験系:ネコを開頭し,脳局所冷却装置を用いて左半球に冷却を行った.脳局所を15℃に冷却し、その最中にEvans blueを静注し,冷却した部位にEvans blueが検出された.内在性物質であるIgGも同部位に検出された.一方冷却後72時間にEvans blueを静注しても脳内にそれが検出されることはなかった。BBBの透過性は15℃で亢進するが,その冷却部位への組織学的影響は可逆的なものであることを明らかにした. 特許出願中の冷却装置(特願2009-236290,特願2009-236291)を使用し,これを改良することによりBBB制御装置の開発の準備を行った.
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