研究概要 |
BBB の時空間的制御により,薬物に治療抵抗性を示す多くの中枢神経疾患の画期的な治療法となることが予想され,例えばてんかんや脳腫瘍に対し,従来の抗てんかん薬,抗癌剤にて十分治療ができる可能性がある,本研究は,温度によって脳局所のBBBを可逆的に制御し,中枢神経系疾患のドラッグデリバリーシステム(DDS)の構築を行うことを目的とした. 1.人工BBB透過性の温度による変化:マウス脳血管内皮細胞培養し、TEERを測定後に温度を15℃に低下させると、著明なTEERの減少が認められた。15℃培養1時間後にはTEERは37℃培養値に比べて約30%の低下を示し、以後培養を継続すると、24時間後には、ほぼ前値にまで回復した。低温によってタイト結合が一過性にオープンする可能性を示唆している。claudin5の発現をウエスタンブロットにて解析すると、15℃低温によって発現量が減少していることが判明した。Claudin5の免疫細胞染色においても、低温暴露時に細胞膜上の免疫陽性の低下が観察された。 2.ラットBBB機能の温度による変化:ラットの摘出脳には冷却群の右脳表(冷却側)にはEBが検出された。冷却後群と非冷却群にはEBの漏出は認められなかった。大脳の冷却を5℃で1時間行うことによって、B8Bの分子透過性が高くなることが示された。冷却群で観察されたEBの漏出が、冷却後72時間にEBの注入を行った群には認められなかったことから、このBBB透過性亢進は一時的な現象であることが証明された。 3.術中冷却脳のBBB透過性変化摘出標本のフルオレセン染色では、冷却部位の脳表にインドシアニングリーンの漏出を観察した。深部白質および灰白質には変化が見られなかった。非冷却部位の脳表及び深部には同様の変化はなかった。BBBの分子透過性が冷却によって亢進することが確認された。ラットで行った脳冷却法に比べると、BBB透過性の上昇の程度は、より低い温度で高く、より長い時間で高いことが考えられる。
|