研究概要 |
本研究の目的は、下垂体腺腫における腫瘍幹細胞の存在を明らかとし、腫瘍発生および増大おける関与と分化による腫瘍多様性の関係を明らかにする。さらに腫瘍幹細胞の分化誘導による薬剤感受性獲得の可能性を探ることである。 本年度も引き続き下垂体腺腫の手術摘出標本から下垂体幹細胞培養条件の設定を行った。本年度摘出した下垂体腫瘍は、非機能性下垂体腺腫21例、成長ホルモン(GH)分泌性下垂体腺腫8例、プロラクチン(PRL)分泌性下垂体腺腫3例であった。このうち2例のGH産生性下垂体腺腫において、DMEM/F12, B27+EGF, bFGF培養液による培養で、安定したsphere形成が確認され、細胞数の順調な増加が認められた。いったん凍結保存して次の実験の準備を行っていたが、再培養したところ細胞数の増加速度が遅くなっていた。保存条件に問題はないと思われたが、連続して移植を行うべく次の細胞株を作成中である。 増殖した細胞を分化条件の培養液に変更し培養を継続したところ、抗GH抗体および抗PRL抗体で陽性の細胞が認められた。これにより、非機能性腺腫の組織内に下垂体幹細胞が存在する可能性が示された。細胞数が増大する速度が遅いため、安定して幹細胞をマウスに移植することができなかった。 下垂体腺腫患者標本をパラフィン固定し、Gliomaの腫瘍幹細胞の指標として報告されているALDH1の抗体で染色したところ、陽性に染色される細胞を認めた。しかし術前の増大速度やMIB-1との明らかな関連性は見出されなかった。今後、腫瘍の浸潤や低酸素領域との関連性を検討する予定である。
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