研究概要 |
SOX9遺伝子は軟骨分化におけるマスター遺伝子であり、軟骨基質の形質維持に極めて重要である。SOX9の発現を促進することにより、軟骨変性の防止あるいは変性軟骨の修復が期待できる。SOX9遺伝子のプロモーター領域をルシフェラーゼ・レポーターベクターに挿入し、これをヒト軟骨肉腫細胞株HCS2/8にトランスフェクションした。この細胞株に新たに購入した1,184種類のスクリーニング用薬剤(Prestwick Chemical)を添加し、デュアル・ルシフェラーゼアッセイを行った結果、1次スクリーニングで67薬剤、2次スクリーニングで6剤に絞り、さらに濃度依存性を検討した。その結果、2つの薬剤XおよびYが濃度依存性にルシフェラーゼ活性を上昇させた。続いて、薬剤XおよびYを薬剤濃度10μMでHCS2/8に添加し24時間後に全RNAを抽出し、定量的RT-PCR法にてSOX9のmRNA発現量を検討した結果、両薬剤ともmRNA発現量が約1.4倍上昇していた。薬剤Xは高濃度(50μM)でさらにmRNA発現量が上昇した。 次に、前駆軟骨細胞株ATDC株にインスリンを添加しながら培養することにより、軟骨多段階分化モデルを構築した。SOX9を発現する前肥大軟骨細胞に分化した時点で、上述と同様に薬剤Xを添加し、24時間後に全RNAを抽出し、定量的RT-PCR法にてSOX9のmRNA発現量を検討した。結果、薬剤濃度10~50μMの範囲で濃度依存性にSOX9のmRNA発現量が上昇した。現在、SOX9の標的となるII型コラーゲンおよびアグリカンのmRNA発現量を測定し、さらに薬剤添加後24時間後の細胞を溶解し、細胞内のタンパクを抽出してE-lisa法およびWestern bltting法によりSOX9、II型コラーゲンおよびアグリカンのタンパクレベルでの発現を解析している。
|